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やらかし列伝 ― アルバイト戦記 ―

趣味・日記
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ケンタッキー・マクドナルド・製氷工場、三つの戦場で学んだこと

みなさま、ごきげんよう。
就労継続支援B型事業所かなうラボ利用者のmayoです。

みなさんはアルバイトをしたことがありますか。「初日から遅刻しそうになった」「預かったお釣りを渡し忘れた」など、苦い思い出がある方もいらっしゃるかもしれませんね。

学生時代の思い出として経験した方もいれば、今まさに働いている方もいらっしゃるでしょう。
私もこれまでいくつかのアルバイトを経験してきました。その中には、今思い出しても顔を覆いたくなるような失敗がたくさんあります。
けれど振り返ってみると、その失敗があったからこそ、自分なりの工夫が生まれました。そして、その工夫は今でも私を助けてくれています。

今回は、そんなアルバイト時代の失敗談をお話ししたいと思います。

【第一の戦場:ケンタッキー】

チキンは揚がった。でも、信頼は黒焦げになった。

最初のアルバイト先はケンタッキーフライドチキンでした。

「マニュアルどおりにやれば大丈夫。」

そう聞いて安心していたのですが、ADHDの私にとってマニュアルとは、読み終えた瞬間から少しずつ頭の中から薄れていくものでした。
働き始めて2週間ほど経った、ある土曜日のことです。
フライヤーにチキンをセットする前には、骨を折るという大切な準備作業があります。マニュアルを見ながら挑戦したのですが、加減が分からず、骨を折るどころかお肉まで豪快に引きちぎってしまいました。それでもなんとかフライヤーにセットし、タイマーを押す。そこまでは(形はどうあれ)完璧でした。

問題は、タイマーが鳴った瞬間に隣の同僚から話しかけられたことです。

「あ、うん、そうそう。」

相槌を打っているうちに、チキンの存在は頭の中からきれいさっぱり消えてしまいました。

異変に気づいたのは五分後。

煙でした。

チキンは揚がったというより、昇天していました。
店長の表情は今でも忘れられません。
ため息と苦笑い、そして絶望が同居した、何とも言えない表情でした。

「なんで気づかへんかったん?」

「……タイマー、鳴ってました。」

「聞こえてたんかい。」

はい。

聞こえていました。

ただ、その音が「チキンを取り出す合図」であるという情報だけが、私の頭の中から抜け落ちていたのです。

実はADHDの特性があると、単なる不注意ではなく、『ここに集中するぞ!』と切り替えることがちょっぴり苦手な場合があります。そのため、別の楽しいことや新しい刺激に意識が向くと、さっきまでやろうとしていたことが、頭の中からポロンと抜け落ちてしまうことがあるのです。

もちろん、失敗した事実は変わりません。
ですが、この日を境に、私はタイマーを二重に設定するようになりました。
焦げたチキンは戻りませんでしたが、小さな工夫はそこから生まれました。

【第二の戦場:マクドナルド】

スマイル0円。ミスは無限大。

次の戦場はマクドナルドでした。
スピードと正確さが求められる現場です。
ところが私は、そこで新たな才能を開花させます。

「複数のことを同時にこなせない」という才能です。

ドリンクを作る。

ポテトのタイマーを聞く。

注文内容を確認する。

1度にいくつもの情報が飛び込んでくると、私の頭のメモリはピピッ、ピピーッと、すぐに容量オーバーでフリーズしてしまいました。

ある昼のピーク時間。

お客様から、

「コーラとジンジャーエールを一つずつ。」

と注文を受けました。

私は自信満々にコーラを二つお渡ししました。

お客様は一瞬固まり、静かにおっしゃいました。

「あの……ジンジャーエールも。」

私も一瞬固まり、静かに作り直しました。

もちろん笑顔で。

スマイル0円。

ミスは無限大です。

ちなみに、そのとき頭の中では、

「ジンジャーエールって、どんな味だったっけ。」

などと考えながら作っていたのは、ここだけの話です。

さらに伝説となったのが閉店後の清掃でした。

床を拭こうとモップを準備したものの、バケツの水を替えるのを忘れ、汚れた水のまま床中を磨き上げてしまいました。

店長は床を見て一言。
「床、前より汚なってる。」
その瞬間、頭の中の沖縄の海が一瞬で凍りつきました。当時は本当に怖くて、ショックで、『もう二度と掃除なんかしたくない……!』と心の中で泣きそうになっていたのは秘密です。今でこそ、こうして苦笑いしながら思い出せるようになりましたが、当時は大真面目に大ピンチでした。

この経験から、私は注文を必ず復唱するようになりました。

ほんの数秒の確認が、大きなミスを防いでくれることを知ったのです。

【第三の戦場:製氷工場】

氷点下の現場で、頭の中だけが南国だった。

三つ目の戦場は製氷工場でした。

夏の暑さに耐えられず、

「涼しい職場で働こう。」

そんな軽い気持ちで応募しました。

実際には、涼しいどころか極寒でした。

それでも最初の五分間だけは快適だったので、動機そのものは間違っていなかったと思っています。

仕事はとてもシンプルでした。

流れてくる氷袋の重量を確認し、規格外のものを取り除く。

それだけです。

しかし私はここで、単純作業ほど油断できないことを知りました。

単調な作業が続くと、意識だけがどこかへ旅立ってしまうのです。

ある日、気づけば重量確認をしないまま五袋ほど流してしまっていました。

監督員の方に声を掛けられて我に返ると、頭の中ではなぜか沖縄の海を泳いでいました。

氷点下の工場で。

「さっきから止まってたよ、手。」

「あ……頭も止まってました。」

自分でも苦笑いするしかありませんでした。

その日から私は、1袋確認するたびに、

「よし。」

と声に出すことにしました。

工場の音が大きいので周囲にはそれほど聞こえていなかったかもしれませんが、少し不思議そうに見られていた気もします。でも、おかげでミスは大きく減りました。

失敗を防ぐには、気合いではなく、自分に合った仕組みを作ることが大切だったのです。

【おわりに】

三つのアルバイトを振り返ってみると、共通していることがあります。
それは、やらかした数だけ工夫が生まれたことです。
チキンを焦がした日から、タイマーを2重に設定するようになりました。
ドリンクを間違えた日から、注文を復唱するようになりました。
重量確認を忘れた日から、声に出して確認するようになりました。
私に必要だったのは、気合いや根性ではありませんでした。
忘れてしまう自分を責め続けることでもありません。
忘れることを前提に、自分を助ける仕組みを作ることだったのです。今、かなうラボでこうして文章を書いている時間も、私はたくさんの小さな工夫に支えられています。
ADHDがあると、多くの人が自然にできることに、より多くの工夫や時間が必要になる場合があります。
だからといって、それはあなたの努力不足でも、気合いが足りないからでも決してありません。

人それぞれ、脳の働き方にも得意・不得意があります。

だからこそ大切なのは、失敗しない人を目指すことではなく、失敗しても立て直せる仕組みを持つことなのだと思います。

焦げたチキンも。

汚してしまった床も。

確認せず流してしまった氷袋も。

今となっては、全部が今の私を支えてくれている経験です。

……たぶん。

以上、私の実体験をもとにお話ししました。

もし、この失敗談を読んで笑っていただけたなら嬉しいです。

そして、「自分だけじゃなかったんだ」と少しでも気持ちが軽くなった方がいたなら、それ以上に嬉しいことはありません。

それでは今回はこの辺で。
また次回、お会いしましょう。